web master’s voice in Japanese (23) 2018/10/24

トランプ政権の中国封じ込め政策

2015年に発刊されたマイケル・ピルズベリー博士の著書『CHINA 2049』が最近になって、改めて注目を集めています。同博士は著名な中国研究家で長く米国の対中政策に関与してきましたが、同書では、中国には「中国の100年マラソン」とも称すべき秘密戦略があり、積年の屈辱に対する怨念を晴らすべく、中国共産党革命100周年に当たる2049年までに、世界の経済・軍事・政治のリーダーの地位をアメリカから奪取する野望があるとしています。

1971年のキッシンジャー、72年のニクソン大統領の訪中に始まった両国の接近は、その後、米国からの投資、技術援助、市場開放が中国に急速な経済発展をもたらしました。しかし、豊かになれば国際ルールを守るとの甘い期待は見事に裏切られ、中国を誤解した間違った対中政策だったとしています。

同博士の反省を踏まえるかのように、トランプ政権は中国封じ込めを開始しました。日本で報じられている関税を中心とした貿易戦争に止まらず、為替・資本の恣意的な管理、知的財産権の侵害、ウィグル民族の虐待などの人権問題、そして急激な軍備拡張などを挙げてあらゆる方面での封じ込めに入っています。

この政策転換は共和・民主両党がこぞって支持しているばかりか、反トランプの急先鋒であるマスコミも支持して、米国を挙げての政策となっています。

更に一帯一路を巡っても、アジア諸国の間で反発が広がってきているばかりか、EUも非難声明を出し、中国封じ込めは国際社会に広がり始めています.

思えば、安倍総理は就任以来、中国を念頭に“地球儀を俯瞰する外交”を展開されてきましたが、日米同盟を基軸にインド太平洋の安全を確保すべく、インド、ベトナム、フィリピン、豪州、更には英国、仏国も巻き込んで、ロシアとも連携しながら中国包囲網を形成してきています。まさにトランプ政権の対中政策転換とぴったりと軌を一にするものです。

10月4日にペンス米国副大統領が中国政策に関する演説を行いました。中国は、国際ルールを守らず、利己的は国家資本主義を推進し、技術などの知的財産を盗み、政治、経済、軍事的手段とプロパガンダで国際秩序を変えようとしており、中国がこの政策を改めるまで妥協しないと強調しています。この演説は、実質的な宣戦布告だとの受け止めも出ていますが、中国を巡る環境は劇的に変化しています。中国はこの状況下、“困った時の日本頼み“で、日本にすり寄ってきています。日本は、それに惑わされずに、“地球儀を俯瞰する外交”を推し進めてほしいものです。