web master’s voice in Japanese(18) 2018/6/14

米朝首脳会談

 

2018年6月12日にシンガポールにて、歴史的とされる米朝首脳会談が行われました。トランプ大統領と金正恩委員長とが会談し、合意文書に署名し、更に昼食会へと続いたようです。金正恩委員長はその直後に北京経由にて帰国、トランプ大統領は夕刻に単独の記者会見に臨みました。

激しい罵倒を繰り返していた両国でしたが、昨年10月ごろより変化が見え始め、今年に入って急転、紆余曲折はあったものの、会談は実現しました。

米国からの軍事的、経済的圧力が功を奏して、金正恩委員長は居丈高な態度を改めて、会談の実現へと急展開しただけに、米側の要求が大筋において通るものと予測されていました。非核化への具体的な展開、そして日本にとっては最重要な拉致問題の早期解決に対する期待が高まっていました。

両首脳の和やかな会談ぶりが報じられた一方では、合意文書は非核化と安全を互いに約束するという包括的なもので、非核化への具体的な段取りやスケジュールに欠けるもので、物足りない内容でした。会談後のトランプ大統領の会見も歯切れが悪く、期待が大きかっただけに、具体性に欠ける合意内容には不安を覚えざるを得ないものでした。

メディアの評価も、会談は単なる政治ショーに過ぎず、具体的な内容に欠けたと否定的なものが多く、特に米国では、米国側は一方的に譲歩しただけで、トランプ外交は失敗だったとの批判が優勢のようです。

 

しかし、考えてみると金正恩委員長が何よりも求めているのは、自らの地位の保全であり、体制の保証です。恐怖で民衆を抑えている独裁国家の外交としては、他国にひれ伏し、或いは他国の言いなりになる姿は、国内の人々には決して見せられない筈です。

トランプ大統領はその辺を汲んで、金正恩委員長の面目が立つことに配慮しての会談だったと想像できます。実務を取り仕切るのは切れ者のポンペイオ国務長官とボルトン補佐官です。ポンペイオ国務長官は大統領の任期中には非核化を終わらせたいと発言していますし、水面下で具体的な交渉が進展していると推測できます。

トランプ大統領は、表面的には金正恩委員長のメンツを立てつつ、水面下では非核化への具体的なスケジュールを煮詰めつつ北朝鮮の政治・経済体制の大転換を実行させる覚悟と自信を持って臨んでいるのではないでしょうか